
2007年9月
タヌキ
この忙しい中華料理店に彼女がやってきて
瞬く間に半年が過ぎた
金髪の長い髪にドハデな化粧
東京を離れる前の晩に彫った彼氏とペアの左腕のタツゥー
Cカップを揺らして注文を取りに来る彼女は
昼の日替わりランチから最終の予約の後片付けまで
毎日 数えられないくらい一階と二階を往復する
たちの悪いその筋の客の注文はすべて彼女の仕事になった
彼女は彼氏に泣きつかれて東京から逃げてきた
学校も家族も決して彼女を止めることはできなかった
駆け落ちした大好きな彼氏は一週間で東京に戻った
気が付いた時 自他共に認めるこの店の看板娘になっていた
彼女の会話の中に過去形は存在しない
半年前のことでも平気でタヌキでしゃべる
新しい彼氏の方が断然良いよとはにかんで笑う
彼女と話していると大人たちはだんだんタヌキに戻っていく